「ラグランジュの運動方程式」は、
以下のように、t, q, q' に関する微分を含む2階の微分方程式になっています。
これに対して、
微分方程式を解くときの常套手段の1つなんですが、
変数を増やす代わりに階数を減らすことで、
微分方程式を解きやすい形に変形することがあります。
結果だけ先に書いてしまうなら、
H(q, p)=
p q' − L(q, q')
と置くことで、
が得られます。
1階の微分方程式になっていますし、
x = f(x) という、
定性的な解析や、数値計算がしやすい形式になっています。
というわけで、
と置いてみます。
まあ、要するに、
の部分を消したいんだから、
ここを別変数においてみようということです。
となって、一応、1階の微分方程式になっています。
(ただし、変数 p が増えた。)
あとは、p の定義式の方から p と q' の関係を逆にして、
q
=
L
みたいにできれば(q' が消えて)完璧なんですけど、
流石にこれは L のままでは無理で、もう少し変形が必要です。
そこで、L とは別の関数 H(q, q', p) を導入します。
適当な条件を付けて、運動方程式の形が簡単になる H を求めたいわけですが、
まあ、まずは、
さっき「L のままでは無理」と言った以下の条件を付けます。
で、もう一つ、q' が邪魔なんだから
(元々 q と q' という2変数で表現できてたんだから、q と p の2つで十分なはず)、
という条件も付けて、H が q' を明示的に含まないようにします。
まず、最初の条件から、
p を含まないある関数 f(q, q') を用いて、
H(q, q', p)=
p q' + f(q, q')
と書けることがわかります。
これを2つ目の条件に代入して、
p
+
f(q, q')=0
で、
p
=
L(q, q')
なんだから、
結局、
f =−L になって、
H(q, p)=
p q' − L(q, q')
という結果が得られます。
(q' は右辺中から消えるはず。)
で、さらに、これを両辺、q で偏微分すれば、
となります。
まとめると、
H(q, p)=
p q' − L(q, q')
と置くと、ラグランジュの運動方程式から、
という微分方程式が得られます。
この微分方程式を、
ハミルトン形式の運動方程式、あるいは単に、
ハミルトンの運動方程式と呼びます。
(ハミルトンはアイルランドの物理学者。William Rowan Hamilton。)
ここで、
正規直交座標系を使った場合には
p = mx、
すなわち、p は運動量になります。
これとの類推で、
一般の座標系 q に対して、
p を一般化運動量と呼びます。
また、
H をハミルトニアンと呼びます。
正規直交座標系を使った場合には、
H = T + V
(運動エネルギーと位置エネルギーの和)になって、
系の全エネルギーを表す物理量になります。
一般の座標系を用いた場合でも、
次節で述べるように、
全エネルギーに相当する(保存則が成り立つ)物理量です。
ハミルトン形式は、
ラグランジュ形式と比べて形がシンプルです。
(「自励系」と呼ばれる、微分方程式の中でもかなりシンプルな部類に入る形になってる。)
まあ、式変形の結果得られただけのものなので、
ラグランジュ形式とハミルトン形式は本質的には同じものを表しています。
したがって、微分方程式が解析的に解けるのなら、
ラグランジュ形式で解こうがハミルトン形式で解こうが得られる解曲線は同じで、
2つの形式に大した違いはありません。
でも、微分方程式は解析的に解けない場合が多くて、
数値的に解いたり、定性的なことを調べるだけにする場合が多々あります。
例えば、具体的な解曲線の軌跡はわからなくても、
周期性を持つかどうかとか、発散するかどうかとかだけは調べられたりします。
そういう場合、
ラグランジュ形式よりも形がシンプルな分、ハミルトン形式の方が解析がしやすいという利点があります。
q(t), p(t) をハミルトンの運動方程式の解曲線として、
(t を明示的に含まず、)
q, p に依存する物理量
A(q, p)
を考えます。
これを時間微分すると、
となるわけですが、
これにハミルトンの運動方程式を代入すると、
となります。
ここで、以下のような記号を導入します。
この記号を、ポアソン括弧(Poisson bracket)といいます。
ポアソン括弧を使うと、先ほどの式は
と書くことができます。
ハミルトニアン
H
自身も q, p に依存する物理量なわけで、
もし、t を明示的に含まないなら、
となります。
(2つの関数が同じものなとき、ポアソン括弧は 0 になります。)
すなわち、ハミルトニアン H は時間的に不変な量(= 保存則が成り立つ)になります。
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ラグランジュの運動方程式に対して、独立変数を増やす代わりに次数を下げて、x = f(x)という、 定性的な解析や、数値計算がしやすい形式に変形。
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ラグランジュ形式から導出するので、任意の座標変数に対して同じ微分方程式が成り立つ。
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ただし、一般化運動量変数pに関しては、いちいちラグランジュ形式に立ち返って計算しなおす必要あり。
正準変換