概要
以前、タイ出張に行ったときに、現地語の勉強をちょっとだけしてみて以来、 微妙に言語学にはまっています。 といっても、「いろんな国の言葉をしゃべれるようになろう」ってのじゃなくて、 言語の分類とか、地域ごとの言語の特徴など調べたり。 言語学は専門外なんでちょっと自信がないですが、 比較言語学っていう分野になるんでしょうか。
ところで、一般的に、日本語は習得が難しく、英語は簡単と言われています。 今まで特にどこが難しいのかとか意識したこととかなかったんですが、 いろんな国の言語の特徴とかを比較しながら見てみると、 確かに日本語は難しいかなぁと思うようになったり。 まあ、そんなみなが言うほどは難しくないと思うんですが。
で、せっかく調べたんだからなんか文章に残しとこうかなぁと思い立ち、今ページを書いています。
日本語
というわけで、まず、日本語に関して簡単に説明を。
言語学上の分類
日本語は、文法構造的に分類して、朝鮮語とかモンゴル語と同じグループである「ウラル・アルタイ語族」ってのに含める考え方が一般的です。 ウラル・アルタイ語族ってのは、名前のまんまなんですが、 ウラル山脈・アルタイ山脈の辺りで使われている言語。 このグループは、日本語の助詞、いわゆる「てにをは」に相当するような語尾を付ける事で名詞の格(主語なのか目的語や、補語なのか)を表すという特徴があります。
ただ、日本語は言語分類学上ちょっと浮いちゃってる言語で、 文法的にはウラル・アルタイ語族なんですが、発音的には南方諸島言語に近い、 さらに、文字は中国からの輸入品というように、 周辺諸民族のものが混ざっちゃった言語です。 おそらく、元々南方諸島系の民族のいる所に、 朝鮮あるいは南インド(日本・朝鮮への稲作文化の伝来元)の言葉が混ざった物ではないかといわれています。(どうやったら先ほど述べたような混ざり方をするのかがまた謎。) 文字に関しては、 その当時は、南方諸島系民族も朝鮮系民族も文字を持っていなかったので、 後々になってから中国から輸入しました。
言語の簡素化
一般的に、いろんな民族が混ざると、異民族間での意思疎通のために、 言語構文は簡素化する傾向があるんですが、 日本に関して言うと、民族が混ざったのが弥生時代前後と古く、 その後、文字の輸入程度の出来事はあったものの、 他民族に侵略・統治されるということが全くなかったので、 あまり簡素化することなく、 古い言語が残ったという感じのようです。 まあ、それでも、現在の日本語は古語に比べればだいぶ簡素化されています。 動詞の活用の種類が減ったり、 いわゆる旧仮名遣いがなくなっていたり。
琉球語・アイヌ語
ちなみに、日本はほぼ単一民族国家と言っちゃって構わないような国家ですが、 一応、琉球民族とアイヌ民族という民族もいます。 琉球語は、文法的に日本本土と全く一緒で、単語も本土の言葉と1対1に対応するようなものがたくさんあります。 母音が3つしかなくて、本土の5つと比べると少なかったり、多少の違いはありますが、 日本語の1方言だとみなしても構わない程度の差異です。 一方、アイヌ語は、日本語よりもイヌイットやネイティブアメリカンの言葉に近いらしくて、 完全に別言語です。 文法的差異も、日本語とアイヌ語よりも、日本語と朝鮮語の方が近いくらいのものらしいです。 ただ、アイヌ語はもはや絶滅寸前の言葉で、アイヌ語を理解できる人は数十人程度しか残っていないとか。
日本語の活用
日本語の活用は大きく分けて2種類
日本語が難しいといわれる理由の1つに動詞の活用があります。 といっても、これは昔に比べればましになっています。 昔は5段、上下1段、上下2段、サ変、カ変、ナ変、ラ変とありましたから。 現在はナ変・ラ変と上下2段はなくなっています。 で、上1段活用と下1段活用は、語幹が違うだけで活用のルールは同じです。 要するに、今は5段活用と1段活用のグループに分かれていると。
外国人向けの文法解説
国語の授業なんかでは、 後にのくっつく助詞・助動詞の種類によって動詞が変化すると習うわけですが、 こういう教え方よりも、 語尾を助詞、助動詞の方に含めて考えた方がシンプルになるらしいです。
5段活用動詞の例として「走る」、2段活用の例として「食べる」を挙げて説明してみます。 日本では国語の授業、「走る」、「食べる」という単語があって、これが「走ら、走り、走る、走れ」、「食べ、食べ、食べる、食べれ、食べろ」と変化して、 これに「ない」とか「ます」とか「れる」という助詞・助動詞を付けると習います。
ですが、外人さん向けの日本語教科書では、 動詞は「hashir」、「tabe」が語幹で、 「anai/nai」、「imasu/masu」、「u/ru」、「eru/reru」を付けると教えるそうです。 2つの語尾のどちらを選択するかは、語幹の末尾が子音で終わるか母音で終わるかで判断。 こういう教え方をすると、日本語の活用もだいぶ単純になります。
英語と比べると
まあ、そう考えると、日本語の活用っていうのはそれほど複雑でもないんですが。 欧州言語みたいに人称による動詞の変化がありませんし。 でも、英語と比較するとやっぱり難しいです。 5段活用か1段活用のどちらかに統一されてしまえばまだいくらか楽なんですけどね。
英語と比べて日本語が難しいというよりも、 英語の活用が他と比べてかなり簡単な部類に入っています。 欧州言語の中では珍しく、人称による変化は三単元の s だけですし、 時制による変化は現在分詞、過去形、過去分詞だけで、 こいつらも規則変化動詞は原形に s, ing, ed を付けるだけですし。 変格活用が「する」と「来る」だけの日本語からすると、 不規則変化動詞が多いのが少し難点ですが、 そこを差し引いてもまだ英語の活用は単純な部類です。
活用のない言語
活用という面から見ると、もっと単純、というか、活用が全くない言語というものもあります。 中国語やタイ語の仲間がそうなんですが、 動詞の活用がないどころか、名詞形・動詞形・形容詞刑の区別すらない。 例えば、英語で move, movement, moving とかなっているものが、 中国語では全部「動」だけで表現。 どの意味で使われているかは、単語の形ではなくて、語順だけで判断します。
ちなみに、動詞に活用がないと、1単語だけで表現できることが限られてくるので、 複合語が多くなってきます。 日本語の「持ってきてみた」って感じの言葉ですね。 「持つ」「来る」「見る」がくっついたような。 そうなってくると、1文中の単語の数が多くなりがちなわけですが、 幸いなことに、中国語やタイ語は1単語1単語がかなり短いので文全体が長ったらしくなることはありません。 ほぼ1単語1音節です。 短い音でいろんなことを表現するために、発音の種類が多かったり、 声調(声のトーン)で単語の意味が変わっちゃったりして、 それはそれで学習が難しかったりもしますが。
日本語の文字
漢字
まず、表意文字である漢字を輸入しちゃったがために、文字数が膨大なものとなっています。 まあ、表意文字には表意文字なりのよさがあるんですが。
数が膨大というのはひとまず置いといて、他の話から。 表意文字の1つの欠点に、読み方が地方によってばらつきやすく、また、時代によっても変わりやすいということがあります。 発音が全然違っても、筆談すれば意思疎通が出来ちゃうんでどっちかが他方に合わせて話し方を変えようとかいう考えがおきない。 例えば、中国語には、北京語、上海語、広東語などの方言がありますが、 それぞれの方言は発音的にはもう全くの別言語で、 口頭での意思疎通は出来ません。 でも、筆談での意思疎通は何不自由なく出来ます。 放送なんかでも、字幕を入れとけば大体全視聴者に理解してもらえる。
この影響は日本にも及んでいます。 単語を輸入した時期・地域によって漢字の読み方が違うんですね。 だから、1つの漢字につき、複数の読み方があって、 これが日本語学習者にとって大きな障壁になっています。
せめて音読み1つ、訓読み1つ、計2つだけならだいぶましなんですが。 あと、旁が同じなら音読みは同じにとかにしてしまえば相当覚えやすくなると思います。
平仮名
一方、漢字を元にして作られた表音文字である平仮名も、あんまり覚えやすいものじゃないんですよね。
まず、母音と子音に分かれていないので、発音の種類が少ない割には文字が多い。 (逆に言うと、発音が少ないからこそ、そういう文字でも覚えきれるわけですが。) 例えば、アルファベットの場合だと、26種類だけで平仮名よりも多くの発音を表現できます。 しかも、音が近い漢字の形を書き崩しただけなので、 漢字を知らない人からみたら規則性が全くない。 挙句の果てに、「い段」とか「う段」の発音がところどころ不規則に変化していたりもします(「さ行」の中で「し」だけ子音が sh だったり)。
母音と子音が分かれていない表音文字ってのも珍しいんですよね。 他国は大体分かれています。 ハングルのように、子音を表す部分と母音を表す部分が、 漢字の片と旁の要領でくっついて1文字になるものもありますが。
日本人にとっても難しい
そんな感じで、日本語は、表音文字だけで50文字近く、 漢字も含めてしまうと、日常よく用いる文字だけでも千文字以上は覚える必要があります。 しかも、発音に法則性がないわ、同じ文字に複数の読み方があるわでかなり大変。
日本人は国語の勉強と称して、漢字などの勉強を小中高と10年以上やるわけですが、 ここまでやってもまだ読めない・書けない漢字が残ったりします。 日本人ですら日本語に悩んでいるのに、外国の人が覚えるのなんて大変ですよね。 本当に日本語を流暢にしゃべる外人の方は尊敬します。
おまけ(ハングル)
そういえば、ハングルは、約500年前に作られた比較的新しい文字です。 (「ハングル」だけで「大いなる文字」という意味なので、「ハングル文字」って言い方は間違いらしい。) 新しいだけあって、システム的に結構優秀。 先ほど書いたように、子音と母音を組み合わせて1文字にするので、 規則性があって覚えやすいです。 (まあ、初学者の中には、記号がシンプルすぎて逆に覚えづらいなんて意見をいう人もいますが。)
また、英語の sh や ch のように、2文字で1つの子音になる(しかも元の子音 s, c, h とは違った音になる)ようなものもありません。 さらに、韓国語には有気音と無気音という発音上の区別があるんですが、 これは、 平仮名が濁点を付けて清音・濁音を区別するのと同じように、 線を1本足すとかで表現します。
まあ、ハングルは、近代になるまでずっと漢字を使っていて、 500年前にようやく思い立って作った表音文字だからこそ、 ここまでしっかりしたものが作れたわけなんですが。 (普通、文字は書物中などに残るので変化しにくいけど、 口語の発音はどんどん変わっていくので、そのうち文字と発音の整合性が取れなくなってくる。)
日本語の発音
発音に関しては、日本語は簡単なものです。 なんせ、音素の数が少ない。
子音
日本語の発音、分かりやすい例で言うと、r と l の区別がなかったり、v と b の区別がなかったり。 欧米系の言語だけでなく、アジアやアラブの言葉を見てみても、 r, l とか v, b の区別が付く言語は結構多いんですが、 日本人には区別できません。 ちなみに、英語の th は結構珍しい音で、あんまりこの音を持っている言語はありません。
英語の子音だと、日本語にないのは r, v, th くらいですが、 もっと面倒な発音を持っている言語もあります。 日本語や英語にない発音として、 無気音と有気音というものがあります。 この区別を持っている言語では、子音の音を出した後に、 口から息を漏らすか漏らさないかで、別の音として認識します。
広東語なんかが無気音・有気音の区別のある言語なんですが、 その代わり、広東語には有声音・無声音(日本語の清音・濁音)の区別がない。 (無・有気音、無・有声音の両方の区別を持っている言語もあったりします。) 韓国語も元々有声音がなくて、単語をつないだときに無声音が有声音に化けたりするのみ。 なので、(外来語を除いて)単語の先頭に有声音が来ることはない。 日本語もこの傾向があって、古来からある単語は無声音だけでできていたりします。
母音
あと、子音だけでなく、母音も5つだけというのは少ない類です。 琉球語なんかはもっと少なくて3つだけらしいですけど、ここまで少ないのはかなり稀。
日本人的な感覚で言うと、 どうやってそんなにたくさん母音を作るのか悩むかもしれませんが、 発音するだけなら意識的にやれば意外に簡単に出来ます。
母音というのは、主に唇の形と舌の位置で決まるわけですが、 まず、舌先と舌の根元の位置をちょっと意識してみてください。 舌先も根元も口の上の方に持ってくると「い」 根元だけを下に持っていくと「う」、 舌先だけ下に持っていくと「え」、 舌先も根元も下側にやれば「お」や「あ」っぽい音が出ます。
これを、唇をすぼめて発音するか、横に広げて発音するかというだけで、 4×2パターン、8種類の母音が作れます。 日本人がフランス語とかドイツ語を習う際、日本語にない母音の発音の仕方を「『う』の口をして『い』」とか「『お』の口をして『え』」と言えなどと教えられますが、これは要するに、(「う」みたいに)唇をすぼめて(「い」みたいに)舌を口の上の方に持ってきて発音しろということです。
日本語の癖
発音が多い言語圏の人が、少ない言語を覚えるのは簡単です。 全く同じ発音の母音を持っていなくても、似たようなのを選んでしゃべっとけば、 なまって聞こえる程度で意味は通じます。 「し」の発音を shi じゃなくて si と言われても、 なんか変な感じはしますがちゃんと「し」だと認識できます。
そういうわけで、発音に関しては、基本的に日本語はそれほど難しい言語ではないんですが、 多少変な癖もあります。 「い」段や「う」段の音は、母音に釣られて子音が変化しちゃっているんですよね。 まあ、分かりやすいので言うと、「さしすせそ」の中で、 「し」だけが s じゃなくて sh。 「し」、「ち」は分かりやすい例ですが、 あと、「ひ」も「はへほ」の音と違う音になっています。 英語の h の音ではなく、ドイツ語の ch 見たいな音。 「う」段の方も、「つ」に加えて、「ふ」の音が違います。
まあ、母音に釣られて音の変わる子音というのは、日本語意外にもあるんですが。 c の発音なんてかなりばらばら。 例えば、c に「あいうえお」の母音を付けてしゃべると、 英語では「かしくせこ」、 イタリア語では「かちくちぇこ」になります。 他にも、 ドイツ語では、前に着く母音によって ch の発音が変わって、 「あうお」の後ろに付く場合、のどの奥の方で「は」って言うような発音、 「いえ」の後ろなら、日本語の「ひ」のような発音になります。
それから、日本語では基本的に「清音/濁音 ≒ 無声音/有声音」なわけですが、 「は」行の音に関してはこれが成り立っていません。 「ば」、つまり b の無声音は p ですよね。 ところが、「は」は h の音。 それ以外にも、「が」行が g になるときと ng になるときがあったり、 「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」が区別できなかったりはします。
古代日本語
昔の日本語と現代の日本語では結構発音が違うそうです。
一番顕著なのは、「は」行の音ですが、 大昔は p、すなわち「ぱぴぷぺぽ」と発音していたそうです。 奈良時代・鎌倉時代くらいになると、 今度は f、「ふぁふぃふふぇふぉ」に近い発音に変わり、 江戸時代くらいに今の音 h になったそうです。 (江戸以前の音は f とか wh に近い音なんですが微妙に違っていて、 「ふわ」って感じの音。 言語学上はΦで表したりする。 現代日本語でも「ふ」の音だけはこの音のまま残っている。)
大昔の p の発音は、擬音・擬態語や、音便変化の中には残っていて、 半濁音という形で表されるようになりました。 濁音の方は p の有声音、つまり b のまま残っています。
江戸時代のΦの音は、「ふ」を除いて残っていません。 このΦの濁音は、「わ」行の音に変化しました。 「は」と書いて「わ」と読んだりするのはその名残のようです。
ちなみに、昔の発音では、「は」行だけではなく、 「さ」行や「た」行の音もちょっと違います。 現代日本語と違って、「さ」行は sa, si, su, se, so、 「た」行は ta, ti, tu, te, to で発音します。 例えば、「ひとつ」という単語、昔は「ぴととぅ」という発音だったそうです。
そんな感じで、 昔の日本語の方が例外(「い」段、「は」行の不規則さ)の少ない発音体系をしていたようなんですよね。 「さ」行の中で「し」だけ例外とか、 「は」と「ば」の音がちゃんと対応していなかったりという不整合は大昔にはなかったようで。
英語
これまで日本語を中心に話をしていましたが、今回は英語の話を少し。
英語はインド-ヨーロッパ(欧印系)語族に属する言語なわけですが、 他の欧印系言語は非常に複雑な活用を持っています。 主語の人称や性別によって動詞や形容詞の語尾が変化するので、 {1人称、2人称、3人称}×{男性、女性、中性}×{原型、過去形、…} と非常に多くの活用形があります。 言語によっては中性形がなかったり、幾分か活用の種類が減っていますが、 それでもかなりの量です。
それに比べれば、英語は活用がダントツでシンプルになっちゃってて、 習得が楽な言語だといわれています。 人称による活用はいわゆる三単元の s しかありませんし、 性別による活用はありません。
イギリスは、元々ケルト系民族(ゲール語やウェールズ語を話す)が住んでた土地を、 アングロ人・サクソン人(ゲルマン系民族、英語の元となる言葉を話す)が侵略・占領しちゃった上に、 中世にはさらにノルマン人(フランス語系)に征服されちゃったという歴史を持ちます。 いろんな民族が混ざってるうちに、互いの意思疎通の必要性から文法が簡略化していったのかもしれません。
でもその反面、 貴族階級はフランス語っぽい言葉、 庶民は英語っぽい言葉をしゃべってたとかいう歴史があって、 英語本来の単語とフランス語由来の単語が混ざって、 スペルや発音が無茶苦茶だったりします。
他の欧印系言語では、 スペルを見れば大体発音の仕方が分かるもんなんですが、 英語はほんとに発音の仕方がばらばら。 ひどい例だと、ou は 「ou」(soul)、 「Λ」(touch, rough)、 「au」(about, out, south, sound)、 「u:」(route, boulevard)、 「o:」(ought) といろいろな読み方があります。
時代や地域によって文字の読み方が変わるということはよくあることなんですが、 普通は同じスペルなら同じ発音に変化します。 ou の発音が「おう」から「あう」に変わるのなら、 ありとあらゆる単語の中の ou の発音が「あう」になるのが普通です。 でも英語は同じ ou でもいろいろな読み方しちゃうもんだから、 文字を読みにくいわ、スペルを覚えにくいわでかなり大変。
皮肉として、 英語では ghoti と書いて fish と読むのかという話があったりもします。 要するに、 enough の gh は f の発音、 women の o は i の発音、 nation などの ti の部分は sh の発音をするから、 それをつないで ghoti で fish だそうです。
thou, thy, thee
大昔には、英語の2人称には単複の区別があって、 単数形は thou, thee, thy、 複数形は ye, your, you だったそうです。
現代英語で二人称に単複の区別がなくなった理由はフランス語の影響らしいです。 ついでにいうと、昔は th の発音を表すのにギリシャ文字のθを使っていて、 θu, θi, θee だったらしいんですが、 その後、θを th で表すようになったのと、 「u: う→あ、i: い→ あい」というような発音の変化に伴って、 thou, thy, thee に変化したそうです。
フランス語では、なぜか単数形の tu は親しい間柄の人間に対しての言い方、 複数形の vous は改まった言い方なので、 その影響を受けて英語でも親しい相手にのみ thou、一般的には ye になったそうです。 で、どっちを使ったらいいか分からない場合ではとりあえず改まった言い方をしておいた方が無難なので、ye しか使われなくなって thou が消えてなくなったとか。
さらに、発音的に近い ye と you がどちらも you になって現在に至ると。 昔の英語では、主語と動詞の語順が「主語 動詞」でも「動詞 主語」でも良かったり、語順に自由度があって、名詞の格を見て主語か目的語かを判断していたんですが、 今では「主語 動詞」の形しかないので、語順だけ見れば格が分かるので、 ye と you を区別する理由もあまりないですし。 現代英語の動詞の活用が簡単なのも同様の理由で、 昔は他の欧州言語のように、二人称語尾は st、三人称語尾は th になってたらしいんですが、 語順が厳しくなった代わりに格を表す活用がなくなったみたい。
フランス語起源の英単語
日本語で、自国語はひらがな、外来語はカタカナというように使い分けれるのって便利ですよね。 フランス語起源の英単語とか、なんか妙なスペルで変な読み方するのがすごく気持ち悪い。 queue なんてその際たるものだと思うんですが、 この単語、日本人的には「クエウエ」と読んでしまいそうな変なスペルをしています。
まあ、フランス語だと思えば、 q の後ろには必ず u が付くんで qu で1つの子音(これは英語でもそうですけど)、 次の eu は2文字で1つの長母音(「う」の口の形で「いー」と言うような感じの音、日本人的には「ゆー」に近い音に聞こえる)で、 最後の e は読まないので、 queue というスペルでキューっていう発音なのも普通なことなんですが。 英語的には、語尾の読まない e は消えて、eu は ew に化けて、 quew というスペルでキューと読むのが自然かと。
u が w に化けてと書きましたが、 昔のアルファベットには v, w の文字はなくて、 u を母音として使うと u、子音・半母音として使うと v か w になっていたそうです。 同様に、j も昔はなくて、i を母音と子音の両方に使っていたとか(英語の y は現在でも母音と子音の両方で使いますが、そのノリで)。 欧州南部の言語では j は「や」行の音なので納得いくと思います。 北部の言語では j は「じゃ」の音なわけですが、 これは j の文字が出来る前からずっとそうだったらしいです。 要するに、ia と書いて「じゃ」と読んでいたらしいです。