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勾配とは

勾配とはスカラー場φに対して、φがもっととも大きく変化する方向を向き、その変化量と同じ大きさを持つベクトル で、 gradφ と表します。φを標高に例えて、ある点にボールを置いたときに自然に転がりだす方向を向き、その坂の傾きと同じ大きさを持つベクトルをφ勾配というわけです。

すなわち、ある点Pにおけるスカラー場φの勾配 gradφ とは、任意の方向nに対し、その方向を向く単位ベクトルを i n 、その方向への方向微分を

∂φ
∂n
とすると、nの向きによらず常に

gradφ = in
∂φ
∂n

が成り立つベクトルです。 また、 gradφ φ とも書きます

これだけでは分かりにくいでしょうからもう少し直感的な勾配の意味を言うと、 勾配とは線積分(「線積分とは」参照)の逆演算 で、直行座標を用いてあらわすと

φ = (
∂φ
∂x
,
∂φ
∂y
,
∂φ
∂z
)

と言う形になります。 φ という書き方をするのは、ナブラベクトル = (

∂x
,
∂y
,
∂z
)φの積 (
∂φ
∂x
,
∂φ
∂y
,
∂φ
∂z
)
が勾配となるからです。

線積分との関係

φは位置 r に関するスカラー場で、 ある経路上での位置は媒介変数tを用いてあらわされているものとします。 すなわち、

φ = φ( r ), r = ( x(t),y(t),z(t) )

がなりたつと仮定します。このとき、φを媒介変数tに関して微分すると、 全微分の公式から

dt
=
∂φ
∂x
dx
dt
+
∂φ
∂y
dy
dt
+
∂φ
∂z
dz
dt
= (
∂φ
∂x
,
∂φ
∂y
,
∂φ
∂z
)
dr
dt

よって

dφ = (
∂φ
∂x
,
∂φ
∂y
,
∂φ
∂z
)・dr

ここで、 φ = (

∂φ
∂x
,
∂φ
∂y
,
∂φ
∂z
) とおくと、

dφ = φ・dr

となります。

上式を始点P、終点Qの経路Cに沿って線積分することを考えます。 上式の r C上の点と考えると、 dl = dr となるので、

 Q
 
P
dφ =
 
 
C
φ・dl
∴ φ(Q) − φ(P) =
 
 
C
φ・dl

要するに、勾配とは線積分の逆演算なわけです。

スカラーポテンシャル

ベクトル F に対して、φ = F となるようなスカラーφ F スカラーポテンシャルといいます

しかし、勾配と線積分の関係から

φ(Q) − φ(P) = −
 
 
C
F・dl

となるわけで、 F のスカラーポテンシャルが存在するためには、 F の線積分が経路Cによらずその始点と終点だけで一意に決まる必要があります。 詳しくは「回転とは」で説明しますが、このための必要十分条件は ×F = 0 です。 すなわち、 ×F = 0 ならば F = −φ となるスカラー場φが存在して、これを F のスカラーポテンシャルといいます

ちなみに、 ×F = 0 を満たすようなベクトル場を「保存場」といいます 。また、回転が0という意味で「渦のない場」ということもあります。保存場というのは、エネルギー保存則が成り立つ場という意味で、重力場や静電場みたいな場のことです。

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