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リーマン球面

リーマン球面という考え方を用いて、 複素数に ∞ を付け加えることができます。 リーマン球面の概要を説明すると、以下のようになります(図1)。

  • 三次元空間上のx-y平面を複素数平面とみなす。

  • 三次元空間上の点(0, 0, 1/2)を中心とする直径 1 の球面をSとする。

  • 球面の上端の点n = (0, 0, 1)をこの球面の北極点と呼ぶ。

  • 北極点nと点p = (x, y, z)を通る直線と、複素数平面の交点をα = u + iv = (u, v, 0)とする。

  • すると、点pと点αは1対1に対応するので、球面上の点pによって複素数を表すことが出来る。

  • 北極点nに対応する複素数はないが、この点を∞に相当する点として複素数に加える。

リーマン球面
リーマン球面

ここで出てきた球面をリーマン球面(Riemann sphere:リーマンはドイツの数学者の名前)と呼びます。 複素数をリーマン球面上の点として考えることで、 複素数に∞に相当する値を付け加えることが出来ます(しかも、空間的に連続に)。

このようにして、複素数 C に∞を付け加えたものを拡張複素数と呼び、 C* とか C の上にハット(^)を付けたもので表します。

C *C{}

この定義による∞は、 北極点で定義されることからも明らかなように、 ただ1つの元になります。 すなわち、 ∞は、 0 と同じように、 偏角を持っていません。 当然、±の区別も付きません(-∞ = ∞)。

余談ですが、 このリーマン球面の考え方のように、ある空間を1次元高い次元から“見下ろす”ことによって、 数学としての表現の幅が広がることがよくあります。

∞の逆数

リーマン球面上に、図2で示すような座標 ( φ, θ ) を導入します。

リーマン球面上の座標 (φ, θ)
リーマン球面上の座標 (φ, θ)

すると、 複素平面状の点 α は、

α = exp(i φ)tanθ

と表されます。 そして、この逆数α-1

α-1exp(-i φ)cotθ = exp(-i φ)tan(π/2 - θ)

となります。 したがって、 座標 (φ, θ) で表される点の逆数の座標は (-φ, π/2 - θ) となります。

ところで、この座標を用いた表現では、 複素数平面状の0(=リーマン球面上の南極点)の座標は (φ, 0)φ は任意)で、 ∞(=リーマン球面上の北極点)の座標は (φ, π/2) になります。 先ほどの逆数に関するルールと照らし合わせると、 0 の逆数は∞、 ∞の逆数は 0、 と言えます。

0 で割っても意味がない

詳しい説明は省きますが、 ∞には何をかけてもやはり∞です。

∀α ∈ C*{0}, α × ∞ = ∞ × α = ∞

先ほどの説明の通り、 リーマン球面上では、 ∞は 0 の逆数とみなすことができます。 なので、0 で割るというのは、 ∞ を掛けると読み替えることが出来るわけです。 ですが、「∞には何をかけても∞」なので、 「0 で割ると何を割っても∞」ということになります。 「何を割ったか」という情報は失われ、 ただ「∞になった」という意味のない結果だけが残ります。

まとめ

リーマン球面という考え方を使うと、 0 の逆数として ∞ を定義できます。 しかしながら、 ∞は 0 と同様に特別扱いが必要な数です。

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