今日の小ネタは、オブジェクト初期化子について、意外と知られてないらしい話。
問い
唐突ですが問題です。以下の3つのコードはそれぞれどういう意味でしょう。
var x = new Line
{
A = new Point { X = 1, Y = 2 },
B = new Point { X = 3, Y = 4 },
};
var x = new Line
{
A = { X = 1, Y = 2 },
B = { X = 3, Y = 4 },
};
var x = new Line
{
A = new { X = 1, Y = 2 },
B = new { X = 3, Y = 4 },
};
ついでに、将来的に認められるようになるかもしれないパターンをもう1つ。
var x = new Line
{
A = new() { X = 1, Y = 2 },
B = new() { X = 3, Y = 4 },
};
答え合わせの前に
答えを説明する前に、コード中に出ていた2つの型、Point
、Line
について。
まず、Point
の方は、どのパターンであっても以下のような感じである必要があります。
class Point
{
public int X { get; set; }
public int Y { get; set; }
}
構造体でもいいんですが、その場合、Line
側に参照戻り値が必要になります。
Line
の方は、2パターンあります。
1つは、プロパティが書き換え可能なもの。
class Line
{
public Point A { get; set; }
public Point B { get; set; }
}
もう1つは、getのみのプロパティに対して、コンストラクター、もしくは、プロパティ初期化子で初期値を与えているものです。
class Line
{
public Point A { get; } = new Point();
public Point B { get; } = new Point();
}
答え
パターン1
パターン1のやつは、一番シンプルというか、多くの方がこれのつもりでオブジェクト初期化子を使っているのではないかと思います。
public static void Q()
{
var x = new Line
{
A = new Point { X = 1, Y = 2 },
B = new Point { X = 3, Y = 4 },
};
}
public static void A()
{
var x = new Line();
x.A = new Point { X = 1, Y = 2 };
x.B = new Point { X = 3, Y = 4 };
}
展開結果を見ての通り、x.A
やx.B
に対する代入が発生するので、A
, B
は set アクセサーを持つ必要があります。
その結果、書き換え可能な方の Line
実装に対してならこの構文を使えますが、
getのみの方の Line
実装には使えません。
パターン2
意外と知られてないのはこいつですね。
public static void Q()
{
var x = new Line
{
A = { X = 1, Y = 2 },
B = { X = 3, Y = 4 },
};
}
public static void A()
{
var x = new Line();
x.A.X = 1;
x.A.Y = 2;
x.B.X = 3;
x.B.Y = 4;
}
オブジェクト初期化子は再帰的に書けます。
その場合、この例の x.A.X
というように、全部展開されて、そこに代入が行われます。
ここで注意が必要なのは、x.A
の初期化は外からは行われないということです。
もしも、Line
のコンストラクター内で A
を初期化していなければ、当然のようにぬるぽります。
つまり、getのみの方の Line
に対しても使える代わりに、
書き換え可能な方の Line
実装みたいにコンストラクター内での初期化をしていないものに対してこの書き方を使うと実行時エラーを起こします。
パターン3
並べられると、似たようなもので全然違う結果になるので気持ち悪くなりますが、 まあ、個別によく見るとそんなに不思議なものではないと思います。
パターン3は、単に匿名型を代入しているだけ。
public static void Q()
{
// 実はコンパイル エラー
var x = new Line
{
A = new { X = 1, Y = 2 },
B = new { X = 3, Y = 4 },
};
}
public static void A()
{
var x = new Line();
// この new { } は匿名型。
// A, B は Point 型なので、匿名型だと型があってない。
// つまり、コンパイル エラー: 匿名型を暗黙的に Point に変換できません
x.A = new { X = 1, Y = 2 };
x.B = new { X = 3, Y = 4 };
}
C#だと、コンパイル時にエラーなことがわかるんでそんなに問題はないと思うんですが。 もしも実行してみないとこの差がわからないとか言われたらちょっと殺意を覚えますね…
パターン4
パターン4は将来の話。今現在はコンパイル エラーになります。 どういう構文が追加されそうかというと、左辺からの型推論です。
public static void Q()
{
var x = new Line
{
A = new() { X = 1, Y = 2 },
B = new() { X = 3, Y = 4 },
};
}
public static void A()
{
var x = new Line();
// new() って書き方で、左辺から型推論してくれる構文が入りそう。
// この場合、A, B が Point なので、new () は new Point() の意味。
x.A = new Point { X = 1, Y = 2 };
x.B = new Point { X = 3, Y = 4 };
}
ものすごいほしい型推論機能です。早く実装されないかな…
とはいえ、まあ、こういう、並べると気持ち悪いコードが書けますよ、と。
{ }
とnew { }
とnew() { }
で全部意味が違うという。